「血圧が高くて悩んでいる・・・」という話を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。実は日本人の3~4人に1人は高血圧症といわれており、75歳以上では70%を超えている、とても身近な国民病です。今回はそんな高血圧症についてご紹介します。
血圧って何?
血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の壁を押し広げる圧力のことです。血圧を測ると「140-90」のように大小2つの数値で表されます。大きな方の数字は最高血圧で、心臓が収縮して血液を送り出した時の値であり、収縮期血圧ともいいます。小さな方の数字は最低血圧で、心臓が拡張して血液を取り込んだ時の値であり、拡張期血圧ともいいます。
なぜ高血圧が怖いの?
高血圧は自覚症状がほとんどないまま時間をかけて進行します。長時間血管に強い圧力がかかっているため、血管の内壁が傷つき、動脈硬化を伴う様々な病気の原因となります。
常に変化する血圧
血圧は一定ではなく様々な条件によって常に変化しています。活動している日中は高く、睡眠中は低くなります。食事や入浴・運動などの日常生活においても常に変化しているほか、気候・気温の影響も受け、暑い時期は低く、寒い時期は高くなる傾向にあります。
また感情の起伏やストレスなどの心理的要因によって一瞬で激しく上下することがあり、病院で測ると緊張していつもより血圧が高めになる白衣高血圧が起こる場合もあります。普段からリラックスした状態で血圧を測っておくと、健康状態の把握に大変役に立ちます。
高血圧の種類と原因
高血圧には全体の85~90%を占める本態性高血圧と、腎疾患や内分泌などの異常で起こる二次性高血圧の2種類があります。
二次性高血圧は、原因が特定できるため、その疾患の治療によりほとんどが改善します。一方で、本態性高血圧は加齢や生活習慣・遺伝などが複雑に絡み合って起こり、原因は不明といわれていました。
しかし、最近の研究で本態性高血圧発症とストレスの間に特に深い関わりがあることが分かってきました。長時間労働による肉体疲労や精神的なストレスにさらされる状況下では、交感神経※が優位になり続け、強い血圧上昇作用をもつアドレナリンやノルアドレナリンといった副腎髄質(フクジンズイシツ)ホルモンが過剰に分泌されます。これらの血中濃度が高まることから、ストレスが本態性高血圧を引き起こす大きな原因の1つになっていると考えられています。
交感神経とは
生命維持に必要な体内環境の調整に働く、自律神経のうちのひとつ。主に興奮を起こして活動を促す働きをしている。もうひとつは副交感神経で、主に休む時に働いて身体の回復・修復に作用する。
降圧剤治療とは
本態性高血圧と診断された場合は、食事療法などの生活習慣の修正と薬物治療を組み合わせるのが一般的です。血圧を下げる薬(降圧剤)には大きく分けて3つの種類があります。
降圧剤は「ノルアドレナリン作用を遮断する」「収縮した血管を広げる」などの作用によって一時的に血圧を下げるものです。そのため服用を中止すれば再び血圧が上昇します。高血圧治療を受ける際は、血圧を下げる根本的な原因に目を向ける必要があります。
主な降圧剤 | 主な働き |
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・α遮断薬 ・β遮断薬 | 交感神経をブロックすることにより血圧を下げる。 |
・カルシウム拮抗薬 ・ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬) ・ARB(アンジオテンシンⅡ拮抗薬) | 収縮した血管を広げることにより血圧を下げる。 |
・利尿剤 | 体内のナトリウムを水分と一緒に尿として排出させて血圧を下げる。 |
~高血圧症・後編では「自分でできる高血圧対策のヒント」についてご紹介します~
<参考図書>
・「図解 安保徹の免疫学入門」安保徹監修(宝島社)
・「高血圧」新啓一 郎監修(主婦の友社)
・「高血圧マンガ読本」藤井潤監修(メディカル・ジャーナル社)
・「高血圧は薬で下げるな!」浜六郎著(角川書店)
・生活習慣病予防シンポジウム(2006年12月6日)