前回に引き続き、「血液を勉強しよう PART3」をお届けします。
血液はどこで作られるの?
その昔、古代エジプトでは血液は消化管の中で作られると考えられていました。
しかし、19世紀に入って骨の中心部にある「骨髄」で作られることがわかってきたのです。
造血機能をもつ骨髄は赤色を呈するため、赤色骨髄(せきしょくこつずい)と呼ばれています。また、造血機能を失い脂肪化している骨髄は黄色を呈するため、黄色骨髄(おうしょくこつずい)と呼ばれています。
骨の中は空洞になっていますが、骨髄はその部分を埋めている組織です。
脳が硬い頭蓋骨で守られているのと同様に、血液を作るという大事な役割を持つ骨髄も硬い骨で守られているのです。骨髄の重さは成人で約2.6kgと身体の中で最大の臓器になります。
すべての血球は1つの細胞から作られる
骨髄では、ほとんどの血球成分が作られています(ただし、リンパ球のT細胞のみ胸腺で作られています)。
ちなみに、液体成分である血漿(けっしょう)は肝臓で合成されています。赤ちゃんの場合は全身の骨髄で作られますが、大人になると胸骨、脊椎(せきつい)、肋骨、骨盤などの限られた場所でしか作られなくなります。
それぞれの血球は見た目や働きが全く異なりますが、元はどれも『造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)』と呼ばれる一つの細胞からできているのです。
これが「サイトカイン」という血球が出すタンパク質の刺激を受け、赤血球や白血球、血小板へと変化していきます。
サイトカインってなに?
白血球などの免疫細胞が生み出す生理活性物質の事を⾔います。
『生理活性物質』とは、身体の中の様々な機能を元気にしたり、細胞同士で情報を伝えたりする物質のことです。
サイトカインは主にインターロイキン類、インターフェロン類、造血因子など、体内に約800種類存在すると言われています。造血肝細胞が様々な細胞に変化していく時だけでなく、ケガが治る時、ウイルスなどの外敵が侵入してきた時など、私たちの身体を維持するためには欠かすことのできない物質です。
酵素の運び屋〜赤血球〜
赤血球は⾎球の中で最も多い細胞であり、約96~99%を占めており、全身へ酸素を運ぶ重要な役割を担っています。
・大きさ:7〜8μm
・数:男性430〜570万個/μl、女性390〜520万/μl
・形:核がなく、真ん中がわずかにくぼんだ円盤状
・寿命 :100~120⽇(骨髄で作られ肝臓・脾(ひ)臓で壊される)
赤血球は、細胞の中に「ヘモグロビン」というタンパク質を持っています。
これは「ヘム」という鉄を含んだ色素と、「グロビン」というタンパク質からできており、赤血球の重量の3分の1を占めています。
鉄は酸素とくっつきやすい性質(酸化)があるため、鉄分を含むヘモグロビンによって酸素が全身に運ばれているのです。
また、酸化鉄は赤色を示します。血液の赤色は、ヘモグロビンに含まれる鉄が酸化した色なのです。
鉄欠乏性貧血って何?
鉄が少なくなると、十分な量のヘモグロビンが作られなくなり、貧血になる場合があります。
これが日本人に最も多い、「鉄欠乏性貧血」と呼ばれるタイプの貧血です。
過度のダイエットなどによる栄養不足や、腸からの鉄分の吸収が不⼗分な場合、⽣理の出⾎や子宮筋腫などの要因によって鉄分が不足することで起こります。
貧血になると全身に運ばれる酸素の量が減るため、酸欠状態になります。
身体に酸素が足りなくなると、頭痛・目まい・動悸・集中力の低下など様々な症状が起こります。
特に脳に酸素が行き渡らなくなるような極度の貧血(脳の酸欠)では、倒れることもあります。
鉄欠乏性貧血は、食生活や生活習慣の改善で治ることも多いと⾔われます。
鉄を多く含む煮干し・ほうれん草・小松菜や、鉄の吸収を促進する低温殺菌牛乳などを積極的に摂ることをおすすめします。
男性は貧血になりにくい!?
女性は、生理・妊娠・ダイエットなどで、男性に比べると貧血になりやすい傾向にあります。
また、もともと女性の方が、男性に比べて赤血球の数が少ないことも大きな原因になっています。では、なぜ男性の方が赤血球の数が多いのでしょうか?
それは、男性ホルモンが深く関係しています。
血球の元となる造血幹細胞が赤血球へと変化するためには、「エリスロポエチン」と呼ばれる腎臓で作られるホルモンが必要ですが、実はこの合成を促しているのが男性ホルモンなのです。そのため、男性の方が赤血球は多く作られます。ただし、男性ホルモンは20~30歳をピークに減少していくので、加齢に伴い貧血になりやすくなると言えます。
赤血球を増やす高地トレーニング
マラソンなどのように足に強い衝撃がかかるスポーツは、足裏の血管の中で赤血球が壊れ、貧血になりやすいと言われています。
そこで、⾚血球を増やす方法の⼀つとして、高地トレーニングが挙げられます。高地とは、低圧、低酸素、低温の環境のことで、トレーニングに効果的な標高は1500~3000mとされています。酸素濃度が低い場所では、酸素を取り込みにくいため、血中の酸素濃度が低下します。すると、身体はその状態を避けるため、より多くの酸素を運搬しようと赤血球やヘモグロビンが増え、貧血が改善されます。
次回も引き続き、「血液を勉強しよう Part4」をお届けします。