今回は、潰瘍性大腸炎についてご紹介します。
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は原因がはっきりと分からず治りにくいため、1973年より「特定疾患(難病)」に指定されていて、若年者から高齢者の幅広い年齢層で発症し、患者数が年々増加している病気です。
特徴的な症状としては、激しい腹痛や下血を伴った下痢などが起こります。大腸の粘膜にびらんや炎症が起きてただれ、潰瘍ができます。
その他にも、発熱・体重減少などの症状や、関節や眼、口内の炎症といった合併症を伴うこともあります。治療はステロイド剤を中心とした薬物療法が基本ですが、薬物療法が効かない場合や重度の症状な場合は大腸の摘出手術を行なうこともあります。
クローン病との違いは?
潰瘍性大腸炎と並んで、「クローン病」が腸の難病に指定されています。激しい腹痛や下血を伴った下痢などの症状はよく似ていますが、クローン病は口から肛門に至るまでの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍が起こります。特に小腸の末端が後発部位で、炎症が筋肉に達する程深いのが特徴です。時には腸の壁を貫いてまわりの臓器に及ぶこともあります。潰瘍性大腸炎とクローン病は2つあわせて炎症性腸疾患(IBD)とよばれています。
特徴
潰瘍性大腸炎の炎症は粘膜だけに限られていて、大腸の一番末端の直腸から炎症が始まり、大腸をさかのぼるように連続的に広がっていきます。 いったん良くなってもまたぶり返すことが珍しくなく、症状が悪化する活動期と落ち着く緩解期のパターンを繰り返しながら、治りきることが無く長期にわたって病気とつきあっていく場合が多くなります。
図のように肛門から身体の奥へ炎症が広がっていきます。炎症の範囲が広ければ、それだけ重症だと言えます。
原因
潰瘍性大腸炎を引き起こす原因ははっきりとわかっていません。腸内細菌の働きや、免疫機能、食生活の変化などが考えられていますが、解明には至っていません。 大腸の粘膜では栄養分や水分などから身体に必要なものだけを選択して取り込み、病原菌などの有害なものには免疫細胞が集合して攻撃・排除するという非常に巧妙なシステムが働いています。ところが、何らかの理由でこの免疫システムに異常が起こると、免疫細胞は自分自身の粘膜を異物とみなして攻撃するようになり、炎症が起こるのではないかと考えられています。
脳と腸はつながっている
腸は広げるとテニスコート1面分ほどの広さがあり、そこには脳に次いで2番目に多い神経細胞が存在しています。身体に有害な物質が腸に侵入した場合、腸は独自の判断で下痢などによって有害物質を排出しようとします。これらのことから、腸は「第二の脳」とも呼ばれています。
脳と腸はお互いに情報交換し、影響し合う関係にあります。脳がストレスを感じると腸に伝わり、下痢など腸の異常を引き起こします。一方、腹痛や下痢など腸が不調の場合も脳にストレスを与え、症状が悪化するなどの悪循環に陥ります。これは脳と腸の神経細胞が、自律神経を介して密につながっているためだといわれています。
潰瘍性大腸炎などの腸疾患にかかる人は、精神的ストレスに敏感である傾向があるといわれています。現代はストレス社会といわれ、ストレスの無い生活を送ることは皆無に等しいです。そこで、自分に合ったストレス解消方法をみつけ、うまく発散することを心掛けましょう。
食事と日常生活について
潰瘍性大腸炎には食事の欧米化やストレスなどが密接に関わっていると言われています。日々の生活を見直し、腸の負担を減らすよう心掛けましょう。
食事
バランスのとれた消化のよい食事を心掛けましょう。 ただし、症状が出ている時は動物性タンパク質や脂肪を控えた方が良いです。
炭水化物:おかゆ・うどん・そうめん・もち
タンパク質:白身魚・はんぺん・豆腐・納豆
ビタミン・ミネラル:キャベツ・大根・人参・トマト・ネギ・ほうれん草
ストレス解消
肉体的・精神的ストレスは腸の対敵です!自分にあったストレス解消法を実践しましょう。
腸内環境を整える
ヒトの腸には消化や免疫力の向上に役立つ様々な微生物が生息しています。臍下丹田呼吸法は下腹部に力を込めることで腸を刺激し、腸内環境を整えます。
<参考図書>
・「腸の病気は連鎖する」寺野彰監修(講談社)
・「潰瘍性大腸炎」福島恒夫(保健同人社)