アルコールと微生物

まめ知識
アルコールと微生物

紀元前からあるお酒は、人間だけが楽しめる奥の深い飲み物です。
適量のお酒は気分を大らかにさせ、食欲を増進させたり、感情や創造力を高めてくれます。同僚同士、お酒を飲みながら仕事について話している最中に良いアイデアが生まれたり、素晴らしい作品が生まれたという方も多いのではないでしょうか?
アルコールはすべて微生物のおかげで出来ている産物だとご存知でしたか?
今回は、微生物の働きの賜物であるビール、ワイン、日本酒、焼酎などの『アルコール』についてお話したいと思います。

アルコールの歴史

アルコール

ビール

約5千年前メソポタミアにビールの歴史を伝える最古のモニュマンブルーの粘土板があります。ビールはメソポタミアからバビロニア、エジプトへ伝わりました。古代エジプトでは流行病の薬としたりビールで洗顔し顔のツヤを若々しく保っていたそうです。中世のドイツではビールスープとして栄養源でありましたし、日本でも明治初期には薬局で売られていたそうです。

ワイン

起源前8000~4000年前に遡ります。熟しきって発酵した実を沢山食べると、何となく気分が良くなることに気づいて、ワインの発見につながったそうです。古代エジプトでは、庶民はビールを飲み、ワインは主として貴族しか飲むことが出来ない高級なものだったようです。

日本酒

稲作農耕が渡来定着した縄文時代から弥生時代にかけて、米を主体としたお酒が作られるようになりました。この頃は「口噛み」といって加熱した穀物を口でよく噛み唾液の酵素(ジアスターゼ)で糖化し、野生酵母によって発酵させる原始的な方法が用いられていました。

アルコールと微生物

お酒は酔いを伴う特別なものとして崇められ、「酔い」は神聖なものでした。そして、人類は酵母菌という目に見えない微生物を巧みに操りながら酒を造るようになったのです。 酒造という技術は世界最古のバイオ技術です。紀元前から存在するお酒の中には微生物の高度な叡智と合理性を兼ね備えた能力が秘められているのです。

なぜ二日酔いになるの?

酔っ払い

チャンポンをすると悪酔いをする、といいますね。これは量を多く飲んでしまうからです。アルコールを分解する肝臓の酵素が2種類ある欧米人と違い、その酵素が1種類しかない日本人は、お酒を分解するのに時間がかかってしまうのです。

アルコール分解のメカニズム

肝臓に送り込まれたアルコールは、2つの酵素の働きで、最終的には水と二酸化炭素に分解され、汗や尿、呼気として排出されます。しかし、分解の途中で一時的に毒性が強いアセトアルデヒドに変化します。このアセトアルデヒドは二日酔いの原因物質です。日本人はこのアセトアルデヒドを分解する酵素を持っていない人が多く、働きも弱いため、お酒が弱い人が多いと言われています。

悪酔いをしない

醸造酒と蒸留酒を一度に一緒に飲まないことです。これは、醸造酒と蒸留酒を混ぜると、分解に時間がかかるからです。

・ 醸造酒(ワイン・ビール・日本酒)
糖質を酵母菌の働きにより原料を発酵させつくったもの。

・蒸留酒(焼酎・ブランデー・ウイスキー・ウォッカ・ジン)
穀物、果実の酵母でアルコールを発酵させてつくったもの。

・混成酒(リキュール、みりん、梅酒、合成清酒)
醸造酒、蒸留酒にハーブや香料、草根、糖質などを加えたもの。

アルコールとおつまみ

アルコールとおつまみ

ビールの定番おつまみと言えば、枝豆ではないでしょうか?『ビール』と枝豆は栄養的に相性がとても良いのです。そのため、昔からこの2つはセットになっていたのです。

アルコールと分解

枝豆に含まれるビタミンB1やビタミンC、メチオニンがアルコールの分解を速めて、肝臓の負担を軽くしてくれる。

更年期障害

ビールに含まれるイソフムロンと枝豆のイソフラボンという2つのポリフェノールには、更年期障害の症状(動悸、肩こり、ほてり、多汗)を軽くしてくれる働きがある。

がん予防

イソフラボンは中高年男性に増えている、前立腺がんの予防効果があると言われている。
枝豆や豆腐などタンパク質の豊富なつまみを一緒に食べると良いでしょう。
①発ガン作用を抑える効果があるイソフラボンを多く含む
②アルコールを処理する肝臓の働きを高める

微生物に感謝

ビールの泡はビールか否かという裁判があったのをご存知でしょうか?
昭和15年、ビールの泡の量を多くして不当な利益を得ていると訴えられたビアホール店主がいました。

結果は・・・
①液体よりも泡の方がアルコール濃度が高いためビールの泡はビールである
②ビールの泡は15~30%は妥当である、という判決が出ました。

ビールの泡も液体どちらも微生物が生み出したもの。最古の生物、微生物が生み出したアルコールという恩恵に感謝ですね。